生成AIの進化によって多くの活用法が確立されています。企業で導入される場合、事務作業などのルーチンワークを効率化する手法が広く普及していますが、広告などクリエイティブ業務で利用するケースも増えてきました。専門スキルを要するクリエイティブ分野においては、画像生成AIツールがとても活躍します。本記事では、生成技術をどう活用すればいいのか具体例を紹介しながら解説していきます。
高品質な画像生成はどうやって可能になったのか調べてみた
画像生成AIの基本的な仕組みとして、大きく分けると2つのプロセスから構成されています。それは、機械学習と生成技術です。
機械学習には、“教師あり学習”と“教師なし学習”の2種類があります。教師あり学習は、特定の画像と人間があらかじめ付けたラベルを一括りで学習させる手法です。先生が生徒に指導するかのごとく、人間が正解を示して、機械がデータを認識していきます。
たとえば犬の画像を大量に学習させていくと、機械は犬の特徴を習得します。同時に予測能力が向上し、正解を自ら導き出せるようになるのです。
教師なし学習は、正解の情報が存在せず、大量の画像からパターンや特徴を見つけます。人間によるラベル付けはないため、アルゴリズムが規則性や構造を学習し、分類および分析を積み重ねていく方法です。機械学習によってデータを蓄積したAIは、画像生成技術を用いて高品質な画像を作り出すことができます。
最も代表的な技術として普及するのはGAN（敵対的生成ネットワーク）です。GANの仕組みを簡潔にいうと、2つのニューラルネットワークを競わせてデータを学習させる手法です。生成器（Generator）と識別器（Discriminator）と称される2つの要素で構成されており、Generatorが偽物のデータを作り出し、Discriminatorは偽物のデータと本物のデータを比較して、本物か偽物かを判定します。この一連の流れを繰り返すことで、生成器はより本物に近いデータを生成することが可能となります。高画質の画像生成はもちろん、実在しないデータの生成なども実現でき、画像生成技術の進化に大いに貢献しています。
クリエイティブ業界で注目される具体例を紹介
生成AIは多くのクリエイティブな仕事で活用されています。今回は広告制作を例に挙げて、具体的なメリットを説明していきましょう。
広告と聞くと、これまでは専門会社に委託するのが一般的でしたよね。テレビCMやネット広告など、様々な広告会社がその業務を担ってきました。
しかしながら、生成AIを利用すれば専門的なスキルが無くても自社で広告を制作することが可能になります。主なメリットは以下の3つです。
①デザインや構成立案の時間短縮
②パーソナライズされた広告の増加
③PDCAサイクルの高速化
クリエイティブ業界で生成AIが注目される最大の理由は、作業時間を短縮できる点です。キャッチコピーを考案したり、どんな画像を選んでレイアウトをどう組み立てるか検討するプロセスは、どうしても時間がかかります。生成AIに効果的なキャッチコピー案を出してもらう、あるいは画像生成AIにプロンプトで指示を出し広告で使える画像を瞬時に作成してもらうことも可能です。クリエイティブ業務を生成AIが代替してくれるため、人材不足に悩む会社こそチャンスが大きいといえるでしょう。
過去のデータを基に、パーソナライズされた広告を大量に発信することもできます。一から広告を制作するのは大変な手間ですが、データ分析を行い短時間で大量の広告を作ることで、個々の顧客ごとに最適な広告を提示するのも難しくありません。一律に同じ広告を出すより、広告効果を高められるはずです。
そして、広告を出稿したあとのPDCAサイクル高速化も重要なポイントです。広告を制作して終わりではなく、効果測定を実施して試行錯誤を重ねましょう。ノウハウが無い会社では、効果的な広告がどのようなものか把握するのが大変ですよね。
PDCAを高速化すれば、短期間で最適な広告に仕上げることが可能となり、広告効果も上昇します。たとえ広告の成果が得られなくても、すぐ別の広告に替えればいいのです。一定の正解が存在しないクリエイティブな分野では、生成AIの活用が早期成功の鍵を握るのではないでしょうか。
おすすめの画像生成ツールを比較してみた
ここでは、国内外問わず人気の画像生成AIツールをいくつかピックアップしていきます。
①DALL-E
ChatGPTを開発したことで世界的に有名なOpenAIが提供する画像生成ツールです。テキストプロンプトを入力すると高品質な画像を自動で作成できます。
最新版の「DALL-E 3」は、ChatGPTとMicrosoftのBing Image Creatorで使用可能です。ChatGPTの場合、月20ドルのChatGPT Plusというプランに課金しなければなりません。
Microsoftアカウントを所有していれば、Bing Image CreatorにてDALL-E3を無料で利用できます。ただし、商用利用不可となっているため個人の非商業的な利用のみです。リアリティある画像の生成が特徴で、広告クリエイターにおすすめのツールとなります。
②Midjourney
画像生成AI人気の火付け役といわれた、テキストのみで画像を生成できるAIツールです。高品質な画像を作成できる点と、商用利用可能なことで広く活用されています。日本語でのプロンプトに対応しておらず、英語に翻訳してから入力する必要があります。月額料金はBasicプラン10ドル/月からMegaプラン120ドル/月まで、4タイプから選択できます。Discordというアプリを用いてチャット形式で操作する仕組みですが、慣れないうちは扱いづらく感じるかもしれません。
③CXAI
電通グループ4社で共同開発された「CXAI」は、広告業界最大手の電通グループが培ってきたノウハウを搭載した生成AIです。バナー制作に強みを持ち、複数パターン制作やパーソナライズ広告の制作にも役立ちます。企業向けツールとなっており、料金は要問い合わせです。個人での利用には適していません。自社でインターネット広告を制作したい企業は検討してみるといいでしょう。
まとめ
生成AIは、多パターンのアイデア出しから画像の生成に至るまで、私たちが負担していた作業をサポートするツールとして大いに活用すべきです。進化を続ける画像生成AIでは、高クオリティなイメージを生成できるのが当たり前となり、高品質画像を大量に作り出せます。今まで実現が難しかったパーソナライズ広告もハードルが下がり、差別化が容易になりました。自社で保有する独自データや強みと、生成AIを上手く掛け合わせながら、クリエイティブな作業を効率的に進めていきましょう。
