生成AIの発展によって、教育現場でもAIを活用するケースが非常に増えています。親御さん世代だと、勉強といえば学習塾に通ったり参考書を何冊も購入することをイメージしますよね。しかし、時代の変化に伴って新たな手法が生まれました。幅広い分野で活躍するAIと教育の相性が非常に良く、多面的な活用法が提案されているのです。
この記事では、AIを教育現場に導入することのメリットおよびデメリット、実際に活用されている事例を紹介します。現代の教育に関する最新情報をお伝えしますので、教育関係者に限らずとも参考にしてください。
AIが教育現場で活用されている事例を紹介
まず最初に、すでにAIを導入して大きな成果をあげている事例を取り上げていきます。
①長崎北高校
長崎市にある公立高校「長崎北高等学校」が、積極的にAIを活用する学校として有名です。同校は、ChatGPTを授業に取り入れて、生徒たちが主体的に適切な活用方法を議論しています。英語学習に関して、文法の誤りや最適な文章表現をChatGPTが即座に指摘してくれる点を評価しつつ、過度な依存はリスクとなり参考程度にすべきという意見も出たそうです。語学とAI、これからのグローバル社会に欠かせない2つの要素を同時に学ぶ素晴らしい取り組みといえます。
②愛媛大学附属中学校
授業内容をきちんと習得するためには復習がとても重要ですよね。とはいえ、一度説明を聞いただけで全てを理解するのは困難で、時には不安な部分を教師に再度質問したい場面もあります。「愛媛大学教育学部附属中学校」では、生徒たちがタブレット端末を使って疑問点などを入力すると、ChatGPTが解説する仕組みを構築しました。いつでも即座に理解を深めることができ、教師側も多くの生徒に対応する時間と負担を削減可能です。万が一生徒に誤情報が伝わらないよう、ChatGPTが出力した内容を教師がチェックするようにしています。
③北海道江別市
学校単位ではなく市内の全公立小中学校にAIドリルを導入する試みが江別市で開始しました。株式会社ジャストシステムの“AIドリル”を導入し、生徒の理解度に応じて難易度や出題範囲を調整しながら出題する仕組みとなっています。夏季休暇などの課題や家庭学習時間に採用する想定で、個々の生徒が効率的に学習を深めることを目指します。小学生の5教科、中学生の9教科をカバーするため、幅広い教養を習得するサポートをAIが担うでしょう。
AI教育のメリット、デメリットについても考えてみた
AIを教育現場に活用すると、教師にも生徒にも多くのメリットがあります。特に注目すべきポイントをこれから解説していきます。
①パーソナライズ教育の実現
これまで学校の授業は、教師がすべての生徒に向けて一律に説明を行い、板書や配布資料も当然同じでした。平等の観点から当たり前とされてきたこの方法だと、生徒によって理解度が異なり、ついていけない生徒が出やすいという問題点が存在します。そこで、個々の能力や進捗状況を考慮して、一人ひとりにカスタマイズした教材を提供することが可能です。過去の学習状況を踏まえながら復習に最適な問題を用意したり、理解度にあわせて宿題の内容を変えることもできます。
②教師の負担軽減
全国的に教員不足が深刻化しており、時間割りを変更など苦しい対応を強いられる学校が増加しています。原因の1つに、労働環境の過酷さが挙げられており、教師を志望する若年層が減少しているのも事実です。AIによって、テストの採点を自動化するなど業務を大幅に効率化すれば、教師の負担が減り、生徒と向き合う時間を増やせます。近年は選択式問題だけでなく記述式問題の採点もAIで自動化する動きが進んでいます。
③リアルタイムでのアドバイスが可能
教育機関以外で学習する際に不明瞭な部分がある時、AIに質問してすぐに解説を得ることができます。また、今学ぶべき内容をAIが過去のデータや学習状況を踏まえて随時アドバイスを送ることも可能になり、生徒も効率的に勉強を進められるでしょう。
他にも多くのメリットがある反面、いくつかのデメリットがある点も無視できません。たとえば、生徒が主体的に勉強に励む姿勢を失い、AIに依存するリスクがあります。作文や感想文をAIに作成させて提出したり、「なぜ？」と問いかける思考力の欠如を招くかもしれないのです。コストに見合うメリットを得られるか不安に思い、AIに精通した人材がいないと活用方法が分からないケースも十分あり得ます。
教育業界に力を入れるAIの提供する企業について調べてみた
AIと教育の融合というテーマで注目したい企業として、まずは「atama plus株式会社」を紹介します。同社は、AIを活用した学習システムを開発する企業で、atama+という独自ツールは全国3,500以上の学習塾で採用されています。AIが生徒の理解度を分析して100％カスタマイズしたカリキュラムを提供します。得意な部分と苦手な部分をAIが把握しながら得点アップに繋がる内容を生徒ごとに提供するので、素早く効果が出るはずです。
「KDDI」と「イーオン」は、AI英会話アプリ「AI Speak Tutor 2」を開発しました。AI講師を練習台として自由に英会話の練習ができ、ユーザーのアクセントや発音をAIが分析・評価してくれます。海外旅行など定番のシチュエーションで会話を事前練習するのにも役立ちます。ただ用意された英文を読むのではなく、ユーザーの会話に応じてAIが自然な返答をするものです。より実践に近い環境で練習できるため、いざ現地に着いた時も萎縮せずに英語を話せるようになりますよ。
まとめ
生成AIは英会話レッスンなど大人向けのビジネスのみならず、公立学校でも導入が広がっています。今10代の学生が社会人となる頃、AIがさらに普及しているのは間違いありません。だからこそ今のうちからAIに慣れ親しみ、AIの活用法を議論しながら知識と経験を積むのは、とても素晴らしい取り組みです。
教師の立場から鑑みても、生成AIは一人ひとりの生徒に適した学習を提供するのに役立ち、学力の底上げに貢献できると考えられます。多くの問題点が叫ばれている教育現場だからこそ、AIによって課題解決を実現すべきなのです。
