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chatGPTは法律にも精通している?法律業務で使えるかについて考察してみた

chatGPTと法律業務

chatGPTが持つ驚くべき性能に話題が集まっており、このAIのビジネスへの活用と可能性も注目されています。反面、chatGPTが「ウソの情報」を提供してしまう問題点もしばしば指摘されます。そのため、間違いが許されない法律業務にはchatGPTはまだまだ使えないとの意見が見られる一方で、「使い方次第で有用に役立てられる」といった反対意見も見られます。
実際のところ、どうなのでしょうか?本記事では、そんなchatGPTの法律業務について解説していきます。

chatGPTが抱えている法律問題について

法律業務ともなれば、法律に即した「正確な」業務が求められます。だからこそ、法務には専門的な知識が求められます。それをAIに任せるとなると、やはりいろいろな問題が出てくるのは避けられません。そんなchatGPTの法律業務への活用において、大きな問題となるのが法律問題です。chatGPTを法律業務に活用することで、法律上の問題を抱えてしまうリスクが存在しているのです。

「そもそもchatGPTが法律に精通しているのか?」という問題がまず出てきます。法律の専門家では「現時点ではまだまだ」というのが共通した見解のようです。少なくとも、法律上の質問に対するchatGPTの解答をそのままアドバイスとして使用するのは難しいようです。不用意に使おうとすると、ウソ・間違いの情報を提供してしまい、最悪の場合偽証罪などの法律問題を抱えてしまいかねません。法律に準じた業務が絶対条件の法務にAIを使用することで、法律問題を抱えてしまうリスクが生じる…とても皮肉な話ですが、AIの特徴を考えると決して軽視できない問題と言えます。

さらに注意が必要なのが、情報漏洩とプライバシーの侵害です。chatGPTに限らず、AIではそのソフト、ツールを利用した人の情報を利用されてしまう問題を抱えています。実際に政府の個人情報保護委員会でも、chatGPTについて「当人の同意を得ることなく個人情報を取得する可能性がある」との指摘を行っています。
これはどんな法律問題をもたらすのでしょうか。例えば、法律業務で顧客の個人情報を処理するためにchatGPTを使用したとしましょう。その際に入力した個人情報をchatGPTが「取得」して、学習するためのデータとして利用する可能性が出てくるわけです。

これによって、すぐに情報が漏洩して個人情報が悪用されるといったリスクはないかもしれません。しかし、chatGPTがプライバシー&情報の保護の観点でどれだけ信頼できるのかを考えると、不安が残るのは事実です。また、プライバシーの侵害が認められた場合、損賠賠償請求を起こされてしまうリスクも生じます。自分の個人情報を利用される顧客の立場からすれば、「業務の効率化のために自分たちのプライバシーが蔑ろにされている」と感じてしまう面もあります。

chatGPTで業務の効率化に成功したメリットよりも、顧客や世間からの評判や信頼を損ねるといったデメリットの方が大きくなってしまう可能性も出てくるわけです。この点か考えても、少々神経質なくらい慎重な扱いが必要になるのは間違いないでしょう。

chatGPTの社内利用禁止の動きについて

このchatGPTの法律業務への活用がもたらす法律問題については、より広い業種でも共有される動きが見られます。具体的には、chatGPTの社内利用を禁止する動きが見られるのです。法律事務所など法務を専門に扱う企業だけに留まらず、さまざまな企業で法務を含めたすべての業務にchatGPTの活用が禁止されているのです。
どんな企業が使用を禁止しているのでしょうか。代表的な例ではアップル、Amazon、サムスンなどが挙げられます。いずれも世界的な大企業です。アップルによると、禁止した理由として「従業員が機密データを流出させてしまう恐れがある」としています。国内では、NTTドコモが社内利用を禁止しています。多くの情報を扱う通信会社が利用を禁止していることからも、多くの企業でchatGPTに警戒心を抱いている様子がうかがえます。

chatGPTは法務で活用できるのか?

これらの状況を踏まえた上で、「chatGPTは法務で活用できるのか?できるならどんな使い方がよいのか?」を検討していくことになります。chatGPTの最大の問題点は、やはりAIが情報を取得することになる情報の漏洩です。そこで、利用する際に個人情報や守秘義務が生じる情報を入力しないように気をつければ、活用できる余地は十分にあると言えます。
問題なのは、法務に必要な重要な情報を使わずにどれだけ有効に活用できるかでしょう。重要な種類や契約書の作成には使用できません。そのため、用途が限られてしまうのは避けられません。しかし、法務の中でも事務関連の業務で活用の余地があります。

例えば、契約書などのひな形の作成です。重要な書類そのものではなく、あくまでその土台となるひな形の作成に利用するのです。これなら、個人情報や守秘義務が生じる情報を入力する必要がありません。あるいは、顧客からの問い合わせの返答例や必要事項の明示の際の文章の作成などにもchatGPTは役立ちます。専門的な知識を備えた法務の人でも、こうした文章の作成を面倒くさく感じてしまうケースはよく見られます。それをchatGPTに代わりに作成してもらうわけです。

これらの活用方法では同じ共通点が見られます。あくまで土台となる部分をchatGPTに作成させ、手直しや最終的な判断は人間が専門的な知識に基づいて行うことです。言い方を変えれば、それほど専門的な知識は必要ないけれども、少々手間がかかってしまう業務をchatGPTに代替させることで、業務の効率を大幅に高めることができるのです。
法律業務の中にも「質より量」が問われる煩雑な作業は多数存在します。こうした時間がかかりがちな作業をchatGPTに任せることで、限られた人員でより多くの案件を処理することができます。

さらに、もう一歩踏み込んだ活用方法も考えられます。例えば、マーケティングなどビジネス関連のコンサルティングも手掛けている場合には、chatGPTと対話を重ねたり、アドバイスを求めたりすることで、さまざまなアイデアや手法を生み出す機会も得られるはずです。これはchatGPTに答えを用意してもらうものではなく、その返答を元に、スタッフ同士でいろいろと議論を重ねることが重要です。chatGPTから思いがけない視点の返答を得ることで刺激をもらって、新しいアイデアやアプローチが思いつくといった可能性も出てくるでしょう。法務の視点から新しいマーケティングのアイデアを提案できるようになれば、事業の幅を一気に拡大させることもできるはずです。

英語をはじめとした外国語の法務を手掛ける際にもchatGPTは役立ちます。翻訳機能を有効に活用すれば国際法務を手掛ける上でもchatGPTは活躍してくれるはずです。

まとめ

法律業務におけるchatGPTの活用には難しい面もあり、慎重な取り扱いが求められるのは事実です。少なくとも個人情報の入力を必要とする業務には不適切でしょう。しかし、簡単だけども時間と労力がかかる業務などに有効活用することで、効率化・能率化に役立てられる可能性も秘めています。chatGPTの問題点・不安点をよく踏まえた上でどれだけ有効に活用できるか、法務の状況や出掛けている業務の範囲などを踏まえた上で、自分なりの適した方法を見出していくことが重要になりそうです。

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