皆さんの周りに、日頃から生成AIを利用している方は何人ぐらいいますか?chatGPTが2022年11月に公開されて以降、生成AIというキーワードが一気に取り上げられるようになりました。ビジネスや生活に変革をもたらし、世の中が大きく変わろうとしています。
日本国内でも生成AIをビジネスに活用する企業が増えてきましたが、まだ個人にはあまり浸透していない気もしますよね。そこで、実際に日本人の生成AI利用率はどの程度なのか調査してみました。
総務書のデータから見る、日本での生成aiの利用率(個人)
総務省は2024年7月、『情報通信白書』にて、個人および企業の生成AI利用に関する調査結果を報告しました。調査内容によると、日本の個人で「生成AI(人工知能)を利用している」「過去に使ったことがある」と回答した割合は9.1%にとどまっています。なんと、90%以上の方は、「過去に一度も使ったことがない」と答えているのです。
利用しない理由として最も多いのは「使いかたが分からない」で40%を超えました。他にも、「自分の生活に必要ない」「利用環境が整っていない」「魅力的なサービスがない」「費用が高額である」といった理由が挙げられています。メディアやネット上で頻繁にフォーカスされていても、個人レベルにはほとんど普及していないことがハッキリ結果に表れました。
では、「利用している」と回答した方は、具体的にどんな時に使っているのでしょうか。最も多いのは「調べものをする」、次いで「コンテンツの要約・翻訳をする」が上位にランクインしています。現時点で利用していなくても、「様々な用途において利用してみたい」と答えた人は6~7割と非常に多いです。もっと知見を得て詳しくなれば、自分も使ってみたいと思っているようです。
すでに使いこなしている層は、「画像や動画を作成する」「制作の改善点やアドバイスを受ける」など、かなり踏み込んだ活用をしています。
法人の生成aiの利用率はどれくらい?
個人間ではまだ十分に浸透していない生成AIですが、企業(法人)についてはどうでしょうか。同じく『情報通信白書』の報告によると、企業の国内企業の46.8%が生成AIを社内業務に利用しているという結果が出ました。「トライアル中」という回答を含めると、約7割の法人が生成AIに関心を強く持っていることが窺えます。
利用方法について、特に多いのは「メールや議事録、資料作成等の補助」「社内向けヘルプデスク機能」「プログラミングコードの生成やバグの修正」「顧客対応の自動化(カスタマーサポートなど)」です。実務での利用状況を踏まえて、法人が生成AIにどんな印象を持っているかアンケートを取ると、ポジティブ・ネガティブ双方の意見が聞かれます。
●ポジティブ意見
「斬新なアイデアや新しいイノベーションが生まれる」
「業務効率化や人員不足の解消につながる」
「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる」
●ネガティブ意見
「社内情報の漏洩などセキュリティリスクが拡大する」
「著作権などの権利を侵害する可能性が拡大する」
「生成物に倫理上不適切な内容や偏見が含まれる可能性が拡大する」
総務省の調査報告を見ると、日本企業の現状として、議事録作成など社内向け業務から慎重に導入を進めている傾向が浮かび上がってきました。国内で生成AIの利用を推進するには、安心安全に利用できる法整備が不可欠だと考える企業が多いようです。
世界で見ると利用率はどれくらい?
アメリカや中国など巨大なIT企業が多数存在する国では、生成AIがどのくらい活用されているのでしょうか。『情報通信白書』では、比較対象として4つの国で調査を実施しています。その結果、個人において「生成AI(人工知能)を利用している」「過去に使ったことがある」と回答した割合は、下記のとおりです。
●中国 56.3%
●アメリカ 46.3%
●イギリス 39.8%
●ドイツ 34.6%
なんと、中国では半数以上の方が生成AIの利用経験がある、または生活に取り入れていることが判明しました。欧米諸国でもおよそ4割前後の方は生成AIを利用しており、日本とは大きな差があります。
一方、海外においても「過去に一度も使ったことがない」と回答した方のうち、「使い方がわからない」が最も多い理由でした。多くの日本人同様、最新のテクノロジーについていけない層が一定数いることは事実です。次に法人を比較してみると、やはり海外企業は生成AIを積極的に導入しています。
●米国 84.7%
●中国 84.4%
●ドイツ 72.7%
と、調査対象となった国はいずれも7~8割の企業が「業務で使用中」と回答しました。
どうして日本企業と大きな違いが生じるのか分析すると、日本では「活用方針を明確に定めていない」と回答した企業が4割を超えています。
対照的に他の国では2割未満です。生成AIを自社でどう取り入れるのか方針を固めている海外企業、まだ活用方法を判断できていない日本企業、という構図が見えます。
まとめ
日本と諸外国で、生成AIに対する姿勢が異なることがお分かりになったはずです。結局のところ、個人レベルで利用率が低く、使い方が分からない状況が、企業の導入実績にそのまま反映されていると考えられます。生成AIの活用は決して難しいものではなく、辞書や書籍のように調べ物をしたり、外国語の翻訳をするなど、日常生活で活躍する場面もたくさんあります。
昔から日本人が未知の新しいモノに消極的で、企業もリスクを恐れ保守的な方針を取る傾向が強いですよね。生成AIは全世界で広がりを見せているので、国内でもいち早く導入する企業が増えることを期待したいです。