チャットボットとは、質問をチャット上に入力すると自動で返信する機能を持つプログラムです。近年、SNSが幅広い世代に普及している影響もあり、チャットを通じて企業と顧客がやり取りをする機会が増えました。AIを搭載した高性能な“AIチャットボット”の導入件数も増加の一途を辿っています。
企業がAIチャットボットを取り入れると、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。また、どのような点に注意すべきなのか、実際に導入して成功した事例を参照しながら解説していきたいと思います。
AIチャットボットの進化がもたらすメリット、デメリット
AIチャットボットを活用すると、企業にとって次のようなメリットがあります。
①問い合わせ業務のコスト削減を実現する
②人員の負担軽減や作業効率化に繋がる
③顧客満足度の向上を図る
④24時間365日対応可能になる
⑤データの収集および蓄積ができる
これまでカスタマーサポート担当者が様々な問い合わせに対応してきた状況から、AIチャットボットがほとんどの案件を自動で処理する環境に変わるわけです。人件費を削減するのはあらゆる企業にとって重要な課題ですよね。従事する社員の人数を減らし、他の業務に時間を割くことが可能です。コールセンター業務などを外部委託するコストも不要になります。
また、ユーザーから嫌がらせ同然のクレームを何度も受けると、担当者は精神的に疲弊するでしょう。AIチャットボットは機械が自動で返信を行う仕組みです。感情を持たず、問い合わせに対し素早く的確な返答を作成し続けます。
ユーザー側の立場では、日夜問わずいつでも返信をもらえるとサービスへの満足度が高まります。サイト内に掲載されたQ&AやFAQを逐一調べる手間をチャットボットが省いてくれるのです。
複数の問い合わせが同時に来た場合、電話対応のみだと長時間待たせてしまうケースも当然あります。待ち時間の短縮は顧客満足度の向上において大事な要素です。
そして、問い合わせ内容や顧客履歴を自動的に集計してくれる点も見逃せません。顧客とのやり取りがデータとして蓄積されるので、商品・サービスの品質向上や業務改善に役立てることができます。
多くのメリットがある反面、いくつかのデメリットも存在するのでしっかり把握しておきましょう。
①運用するためのコストや工数がかかる
②すべての問い合わせ対応を自動化するのは難しい
③回答精度を高めるまでに時間を要する
④複数の質問に一度では答えられない
注意すべき点として、AIチャットボットを導入しても維持管理のコストが必要です。新商品をリリースする、事業環境が変化するなどの場面でQ&Aのデータを追加・修正しなければいけません。AIに学習させるプロセスでは人間が手を加え、随時精度を高めることが求められます。さらに、ユーザーが一つの文面で2つ3つ纏めて質問してくるケースへの対応は困難です。現状、1つの問い合わせに適切な回答を1つ用意する仕組みですので、複数の質問が書かれていても1つの回答を生成するのみです。
よってAIチャットボットでは解決しきれない問い合わせが電話・メールで寄せられる可能性は十分あります。カスタマーサポート担当者をゼロにできるわけではないのです。
顧客サポートを効率化する事例について紹介
カスタマーサポート向けにAIチャットボットを導入している事例として、保険会社の取り組みを紹介しましょう。
「ライフネット生命保険」では、LINEなどのSNSプラットフォームで簡単に保険の見積もりができるサービスを提供しています。チャットの案内に沿って、生年月日や性別などのパーソナルデータを入力すると、おすすめの保険を自動で提案する仕組みです。
もちろん、金銭の支払いが生じるものですから、状況に応じて有人対応に切り替わる体制を整えています。“加入するか悩んでいるけど気軽に見積もりがしたい”そういったニーズに応え、かつスタッフの負担を削減できるAIチャットボットは業務効率化に多大に貢献しています。
「SBI損害保険」は、営業時間外の対応窓口としてAIチャットボットを導入しました。平日の日中以外はチャットボットが自動対応する体制を完備したことで、24時間365日顧客からの問い合わせに素早く対応できます。
マンション・アパートの賃貸事業を展開する「レオパレス21」は、レオパレス21バーチャルデスクというサービスを導入しています。対面で相談している感覚で物件探しができ、顧客の検索条件を読み取り登録物件の中から希望に沿う物件を提案します。24時間体制で新規顧客を取り込めるうえ、店舗から離れた場所に住んでいても手間がかかりません。希望の物件が見つかったあと有人店舗に手続きを移行することで、顧客もスタッフも物件探しの負担を削減できるのです。金融や不動産業界など過去の膨大なデータが蓄積されている業界では、AIチャットボットが業務効率化に役立つケースが多いといえます。
簡単に始められるチャットボット導入のコツ
チャットボットの導入で失敗しないためのコツをいくつかお伝えします。
●導入する目的を明確にする
●運用管理体制を整える
●テスト運用を行う
●自社に適した導入方法を検討する
まず始めに、なぜAIチャットボットが必要なのか議論して、導入の目的を明確にしてください。問い合わせ対応の課題を洗い出し、どのようなチャットボットが必要なのか検討する必要があります。
現在では様々な種類のチャットボットがリリースされているため、自社に適したツールを選択しないと期待するような効果が得られない可能性も否定できません。そして、先程も説明した通り、導入後ほったらかしではなく運用管理をしっかり継続することが重要です。
具体的には、「新規登録するFAQの作成」「利用状況の分析」を実施する部署や担当者を決定します。チャットボットを提供する企業とのやり取りも行います。AIでは対応しきれない問い合わせの電話・メール対応の担当者もあらかじめ決めておきましょう。データ収集やFAQの登録が終わり初期設定が完了したら、運用開始前にテストを実施します。想定される質問を投げかけ、チャットボットが適切な回答を生成できるか確認してください。あくまで顧客満足度を向上させるために導入するわけですから、その目的を果たせるか人間の目でチェックをするべきです。
まとめ
AIチャットボットは、これまで人手をかけていた顧客のサポートや接客、営業などの業務を大幅に効率化する効果を期待できます。人手不足に頭を抱える企業が多く、人材というリソースをどう配分すべきかはビジネスにおいて非常に大切です。自動化できる業務をAIに任せて、人間はより創造的な業務に時間を割くことができます。導入を検討する際、目的やゴールを明確にする作業を怠らず、運用結果と向き合いながら改善を重ねていくこともしっかり頭に入れておいてください。