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環境問題の解決に貢献するAIの最新活用事例

環境破壊とAI

地球温暖化などの環境問題は、私たちが向き合うべき重要課題です。真夏の猛暑やゲリラ豪雨といった異常気象、南極の氷が溶けて海面が上昇するなど、身近なところでも環境問題を意識する場面が増えました。最近では、環境問題への取り組みにAI(人工知能)を活用することが注目を集めています。MicrosoftやGoogleといった自社でAIを開発する大手企業を筆頭に、AIを環境問題の対策に役立てる動きが各国で見られます。その一方、AI自体が環境への負荷が大きく、本当に価値があるのか効果を疑問視する指摘も出ており、議論が活発化しています。
本記事では、AIが環境問題に対してどのように貢献できるのかをあらゆる視点から分析します。今後AIを導入予定でSDGsや環境保全を意識する企業にも役立つ内容です。

AIが環境問題の解決にどう使われている?調べてみた

それでは、AIが実際にどう使われているのか、具体的な活用例をいくつか紹介していきましょう。

①天候予測で農業用水の消費量を削減
作物の生育状況をリアルタイムで確認し、天候予測を踏まえたうえで農作物に必要な水や肥料の量を最適化することが可能です。また、AIによって収穫量を予測したり、収穫作業をロボットによって自動化すれば、農作業の負担を大幅に削減できるでしょう。広大な土地を保有し農業大国といわれるオーストラリアでは、タスマニア州の農業関連企業「Yield(イールド)」が、リアルタイムの詳細な天候データを生成する技術を開発しました。それによって、農業用水の消費量を削減することに成功しており、収穫量の増大も実現したそうです。

②絶滅危惧種の保護
絶滅危惧種であるザトウクジラの保護目的にAIが活用されています。NOAA(米国海洋大気庁)とGoogleが共同で「海中の環境音から特定の音声(ザトウクジラの声)だけを抽出するAI」を開発しました。ザトウクジラの声を記録しながら活動エリアを正確に把握して、保護活動に役立てています。

③森林をAIで監視
森林は大気中のCO2(二酸化炭素)を吸収する働きを持ち、環境保全に欠かせないものです。ところが昨今、熱帯雨林において違法な森林伐採が後を絶たず問題となっています。その対策として、音を検知することで違法な森林伐採を監視するシステムや、衛星写真から森林伐採の監視を行うAIが導入されています。スマートフォンを森林内に設置して、チェーンソーや木材搬出用のトラックの音をいち早く検知できます。熱帯雨林の異変を迅速に見つけ違法伐採の発生を防ぐ目的です。侵入者を警戒させる効果もあるでしょう。

④衛星データとAIで地球資源の監視
地球全体の様子を俯瞰的に見ることは人間には難しいですが、衛星画像とAIを導入するとモニタリングが可能になります。森林破壊や北極・南極の凍土の融解を観察して、適切な環境保全を行うことに役立ちます。永久凍土が融解すると二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが放出されるため、地球温暖化を悪化させる恐れがあるのです。さらに、再生可能エネルギーとして世界的に普及が進む太陽光発電の状態を衛星を通じて監視し、故障の早期発見やメンテナンス作業の効率化を図ります。

AIは逆に環境への負荷も大きいというのは本当?

AIの活用が環境問題に大きく役立つのは事実ですが、対照的にAIが環境に負荷をかけるネガティブな側面も把握しておかなければなりません。
最大の問題点は、AIを開発するプロセスにおいてCO2を大量に排出する場合があることです。アメリカの研究者や専門メディアが発表したデータによると、精度の高いAI開発を行うには27万時間以上の時間を要します。
例えば、GPT-3モデルのトレーニングには、およそ1,300MWhの電力が使用されると推測されています。これはアメリカの130世帯分の年間電力消費量に相当する数値です。GPT-3の進化版であるGPT-4の開発には、さらに50倍の電力を消費するという予測データも存在します。

AIを開発するためには機械学習やディープラーニングといった手法が一般的です。大量のデータを処理して機械学習を行う過程で、「プロセッサを稼働するための電力」と「プロセッサを冷却するための電力」の使用量が増大します。今後さらにAIを導入する企業が増えるのは間違いないですから、比例的に電力使用量が増加するわけです。
1つのAIモデルの訓練で排出されるCO2の量は約284トン、乗用車1台が新車から廃車となるまでに発生する全CO2排出量の約5倍ともいわれています。要するに、AIが大量の電力を消費するとCO2排出量増加につながり、環境保全に貢献するメリットを相殺してしまうと考えられます。
とあるAI研究者は、「AIモデルを導入したら、常にオンにしておかなければなりません。ChatGPTは決してオフにならないのです」と述べています。ChatGPTは毎週1億人以上のユーザーが利用します。“オフ”になる時間など1秒もありません。

見落とされがちですが、サーバー冷却のために水も大量に必要です。生成AIに1つの簡単な質問をして回答を得ると5mlほどの水を消費すると推定されます。以前よりだいぶ効率化されたものの、利用ユーザー数が増加するに伴って消費量も増えてしまいます。

グリーンaiについて解説

AIを環境対策として活用するには、CO2排出量を抑制しながらAIの開発を進めるという点が非常に重要です。このような状況を改善するために注目されるのが「グリーンAI」という概念です。
グリーンAIとは、AIを可能な限り省エネルギーで運用するための方法、そのやり方によって開発されたAIを指します。AIによる環境負荷を軽減しながら持続可能なAI開発を目指す考え方とも表現できるでしょう。具体的には、次のような点を配慮することが求められます。

●再生可能エネルギーの利用
●廃棄物の削減
●効率的なアルゴリズムの追求

電力消費量が大きな課題ですから地球に優しいエネルギーとされる再生可能エネルギーの利用は特に大切です。データセンターを開設する際に再生可能エネルギーの供給を受けやすい立地を選択したり、すでに再生可能エネルギーを使用している業者を選ぶなど、CO2排出量を抑える取り組みが欠かせません。グリーンAIの実現は、SDGsの目標達成に直結するともいえます。“環境に配慮したAI”が未来のスタンダードになるでしょう。

まとめ

AIの活用により人間の力だけでは解決が困難な環境問題を改善に導く効果を得られます。環境保全は地球全体で真剣に向き合う課題です。だからこそ地球を俯瞰的に見る衛星の活用や上空からの映像分析が効果をもたらします。
高度なAIの開発には電力が不可欠であり、データセンターが莫大なエネルギーを消費するのも致し方ないです。いかに持続可能な方法でAIを活用するか、CO2排出量を抑えるかが焦点になります。私たちもAIの利用者として地球環境に配慮することをしっかり頭に入れておきたいですね。

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