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量子コンピューターとAIが出会うと何が起こる?量子コンピューターとAIの関連について解説

量子コンピューターとAI

現在一般的に使われているコンピュータが進化した「量子コンピュータ」が世界的に注目を集めています。皆さんも一度は耳にしたことがある言葉かと思いますが、どんな特徴を持つのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。
量子コンピュータは様々なIT技術を大きく変えるポテンシャルを持っており、日本企業でも導入事例が増え始めています。本記事では、量子コンピュータの基本的な構造や特徴、さらにAIとの対比という視点からも解説します。

量子コンピューターとはどんなもの?

量子コンピュータは、量子力学の原理を利用した“次世代のコンピュータ”と称されています。一言で言い表すと「量子ビットを使って計算を行い超高速の処理能力を有する機器」です。処理速度は従来のコンピュータのおよそ1億倍に達するといわれています。
一般的なコンピュータはあらゆる情報を「0か1」という2通りで表現します。この最小単位を“ビット”とよびます。量子コンピュータは量子力学に基づいて高速計算を実行する仕組みです。「0と1の重ね合わせ」という特性が“量子ビット”の凄さたる所以となります。
どちらか一方の情報だけが送信される従来コンピュータに対し、量子コンピュータは0と1以外の情報を持つことが可能です。その性質を用いて計算を行うと大量の情報を高速処理できるわけです。
量子コンピュータには「量子ゲート方式」と呼ばれるタイプと「量子アニーリング方式」と呼ばれるタイプの2種類があります。現在広く普及されているのは量子ゲート方式で、これまで説明した量子ビットや重ね合わせを利用する方式です。

処理速度にどれ程の違いがあるかというと、たとえば従来のコンピュータで10ビットの情報を処理する場合、計算回数は1,024回となります。一方、量子コンピュータの場合、1度の処理で1,024回分の計算を実行します。このような利点を活かし、医薬品の開発やビッグデータの解析など大量の情報を素早く処理することが求められる分野で量子コンピュータが重宝されるのです。

量子コンピューターとAIも違いについて詳しく解説

量子コンピュータとAI(人工知能)、どちらも情報を処理する能力に優れた特徴を持っており、混同してしまうかもしれません。AIは人間の脳のような機能をプログラムで作り出したものです。対して量子コンピュータは超高性能な機器です。ざっくり言えば、AIはソフトウェア、量子コンピュータはハードウェアという風に区別できます。ただし両者は補完的な関係にあると表現するのが適切でしょう。量子コンピューターの活用方法として、「量子機械学習」という手法が期待されています。

AIを開発するために必要な機械学習の過程では、膨大な情報を学習させなければなりません。情報処理に多大な時間を要する難点を、量子コンピュータと組み合わせてデータ量や学習回数を大幅に改善することが可能です。ChatGPTのようなAIツールはユーザーの指示に基づいて回答を生成する機能を有しますが、量子コンピュータにそのような特性はありません。機械学習の分野でAI開発、AIの可能性を飛躍的に広げる役割を果たすことになるでしょう。
量子コンピュータの実用化にはまだ課題が多く残されているため、量子機械学習の普及も少し先の未来になると推測されます。とはいえ、AIが一般的に使われる世界の到来が近づく中、AI開発を迅速化させる量子コンピュータの活用も並行して研究されているのです。

量子コンピューターやaiに関連する注目すべき企業

量子コンピュータの分野で世界を牽引するのは、アメリカのアルファベット(※Googleの親会社)などの大手IT企業です。Googleが自社で開発した量子チップは、スーパーコンピューターでも“10の25乗年”かかる計算を5分未満で実行することに成功しました。圧倒的なポテンシャルを知らしめる研究結果をうけて、改めて量子コンピュータへの関心が高まっています。
日本国内の企業に目を向けると、「NEC」は経済産業省の主導する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や科学技術振興機構(JST)の研究開発事業に参画しています。また、「NTT」は世界初となる電子の飛行量子ビットの動作を実証しました。「富士通」は大阪大学や理化学研究所と提携。超電導式の量子コンピュータ開発を進めています。

ソフトウェア開発会社「フィックスターズ」は、量子コンピューティングのクラウドサービスを展開する企業です。富士通、日立製作所、東芝など多くの大手企業と協業し、高性能な計算基盤を提供する点も注目です。テラスカイ傘下の「Quemix」は、量子コンピューターの開発を進め、性能を最大化させるための研究も行っています。SCSKと資本業務提携を行い、社会実装に向けた動きを加速させています。
他にも、日立製作所や三菱電機など、大手電機企業が研究開発を牽引する状況となっていますが、ベンチャーやスタートアップと提携して新技術の実用化を目指す動きも活発になってきました。

まとめ

量子コンピュータは、従来のコンピュータでは膨大な時間を必要とする計算処理を僅かな時間で実行できることが最大の魅力です。ビジネスの現場でも、いかに大量の情報を素早く処理してアウトプットに繋がるかが成功のキーポイントですよね。処理速度が速ければその分次の一手をスピーディーに展開でき、ライバル企業に差をつけることができます。
現時点では、量子コンピュータの性能を上げるほどエラー率が高くなり、誤り訂正が難しい点が実用化に向けた課題といわれています。東大発スタートアップ「OptQC」は、「光量子分野は日本がリードしていきたい」と意気込んでいます。そういった高い目標を持って研究開発に尽力する日本企業を、私たちも応援していきたいところです。

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