まるで人間が話しているかのような音声を人工的に作り出す、音声生成AIの技術が目覚ましい成長を遂げています。自動音声ガイダンスで使われる音声は、単調でいかにも機械的だというイメージをお持ちの方が多いはずです。しかし、AI技術が発展して、特定の人物がきわめてナチュラルに文章を読み上げたり、新しい音声を作成することすら可能になっています。
普段あまり意識せずとも、音声というものはゲームやアニメ・ナレーションなどあらゆるコンテンツで必要なものです。音声生成AIは、一体どんな技術によって実現したのでしょうか。誰でも簡単に音声を作れるツールもあわせて本記事で解説していきます。
人間らしい音声を生み出す技術の秘密を調べてみた
音声生成AIが人間に近いリアルな音声を生成する過程では、複数の高度な技術を組み合わせています。
基盤となるのは、機械学習およびディープラーニングです。膨大な音声データをコンピュータに与えて、音声のパターンを学習します。そして、ニューラルネットワークを多層に重ねる手法により、段階的に特徴を学び、自然な音声を作り出すことを可能にします。
音声合成の技術自体は以前から存在しますが、機械的な音声にならざるを得ませんでした。人間らしい音声を作成するために現在普及している技術が、「コーパスベース合成方式」です。
人間の音声データとテキストがセットになった大量のデータを収集した音声コーパスから、音声波形を使って音声を合成します。自然なイントネーションや抑揚も、この音声波形によって作られます。
音声波形の作成方法は以下の2つに分類できます。
「波形接続型音声合成方式」は、学習した音声データを細分化しておき、つなぎ合わせる手法です。音声素片と称される最小単位まで細かく分解し、自然言語処理や音声信号処理を融合させながら適切な組み合わせを生成します。アクセントや構文などの情報を汲み取ったうえで高品質な音声を作り出せる技術です。
「統計モデル型音声合成方式」は、音声とテキストのデータから統計モデルを作り、それを使って音声波形を推測する手法です。テキストデータと音声の音響特徴量の関係を学習しておき、対象となるテキストを解析し音響特徴量を予測したのち、音声波形を合成します。これらの技術を複合的に活用すると、実際の人間が話しているような音声をコンピューターから作り出すことができるのです。
音声生成AIが変える、エンタメやビジネス現場を調べてみた
音声生成AIをビジネスで活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的な事例を、いくつか例を挙げて説明します。
●新しいコンテンツの作成
●コールセンター対応の自動化
●ボイスボットでカスタマーサービスを向上
●音声翻訳
音声生成AIは、特定の音声を再現することにくわえて、新しい音声を生み出すことも可能です。企業が制作する動画コンテンツにナレーションを自動生成でき、作業効率化とコスト削減を同時に実現します。
また、映画やゲーム・アニメ業界では、声優の代わりにキャラクターの声を音声合成する活用法が広まっています。セリフが多い作品で音声を自動で作成してくれるほか、セリフを多言語対応させることもできます。ユーザーが指定した言語に沿って、テキストを自動翻訳して音声を作れば、コンテンツを海外に広めるハードルも一気に低くなるでしょう。
Youtubeなどに投稿する動画のナレーションを自動生成し動画作成にかかる時間を短縮する手法、Podcastなどの音声コンテンツを素早く制作する手段にも利用できます。ビジネス界隈においては、コールセンターの顧客対応業務を削減するため、自動音声応答システム「ボイスボット」を導入する企業が増えています。音声認識と音声合成の技術を兼ね備えたボイスボットが24時間返答を行い、対応しきれない問い合わせだけ人間が応対すればいいわけです。オンライン教育や新人研修用のトレーニング教材、あるいは視覚障がい者向けコンテンツにも役立つと考えられます。
初心者におすすめの音声生成ツールを紹介
初心者ですと、まず無料でツールを試してみたいという方が多いのではないでしょうか。そこで、誰でも気軽に使える音声生成AIを6つピックアップしてみます。
●Text to Speech AI
Googleが提供する高性能音声生成AIツールです。独自の音声合成モデルを搭載し、リアルタイム音声変換や自然なオリジナル音声を作成できます。
●VOICEVOX
無料でテキストの読み上げができるツールです。キャラクターを選択するだけで音声出力を行います。アクセントやイントネーションを細かく調整でき、商用利用可能なのも嬉しいポイントです。
●Lovo.ai
元音声のアクセントやニュアンスを保ったまま、新たな音声の生成ができるツールです。日本語版のサイトが無く、英語入力を基本としています。外国語のリアルな音声を作りたい場合におすすめです。
●Speechify
音声読み上げツールの一つで、PDFや画像などをアップロードして文章を読んでもらうことも可能です。アプリ版でサービスを提供するため、スマートフォンやタブレットからのアクセスが便利です。アメリカの超有名ラッパー、Snoop Doggの声を使うこともできます。
●CoeFont
ボイスチェンジャーやリアルタイム音声変換機能を搭載しています。有名声優や著名人の声を選ぶことができ、「おしゃべりひろゆきメーカー」という2ちゃんねる創設者・西村博之に文章を喋ってもらうサービスもあります。自分の声のAI音声を無料で作成することも可能です。
●VALL-E X
Microsoftが提供する音声合成AIツールです。日本語・英語・中国語でたった3秒の音声サンプルから人間の声を再現できます。感情表現を反映でき、短い文章ほどより自然なニュアンスで表現します。
まとめ
音声合成AIの発達により、ナレーションなど指定した文章を読み上げてもらうだけでなく、新しい声を作り出すことも可能になりました。これまで人間の音声で録音していた作業を、AIが自動化してくれます。プロに外注する分のコストを削減でき、大量の音声コンテンツを短時間で制作できる画期的なツールなのです。将来は、人気声優やナレーターの声をAIに学習させると、その後はすべて自動でセリフやナレーションを吹き込める時代になるかもしれません。